実は3つある通学ルート
東海大学前駅から湘南キャンパスまでは主に、エスカレータールート、県道ルート、裏道ルートの3つの通学ルートがある。
まずエスカレータールートはその名の通りエスカレーターがあるほどの急な坂道で、東海大学前駅南口からまっすぐ、ファミリーマートのある交差点から入るルートだ。
次に県道ルートは駅前からエスカレータールートに入らずにまっすぐ歩き、交差点を右に曲がり、県道613号に入るルートだ。
最後に裏道ルートは県道ルートからの派生で坂の途中にある、湘南くれーぷというお店の隣にある細い小道に入るルートだ。
駅から大学まで本当に15分?
今回の調査では、東海大学前駅南口から湘南キャンパスまでの3ルートを、朝の通学時間帯に歩いて比較した。その結果、所要時間は約14〜20分と条件によって大きく変化した。最速の14分は、エスカレータールートで、信号にひっかからずに、エスカレーターを歩いて利用した場合だった。一方、朝8時半から9時ごろは駅前から学生の流れが続き、エスカレーター前にも列ができるため、自分のペースでは歩けず20分近くかかることもあった。
県道ルートは17分から18分で着くことが多かった。時間は他ルートよりかかるが道が緩やかで道が混みづらいので楽な印象がある。自転車や、バイクを使う人はこのルートを使うと思われる。
最後に裏道ルートだがこの道は他ルートより通る信号が1つ少ないため、所要時間にばらつきが少なくだいたい15分で到着する。公式サイトの「徒歩約15分」は、混雑のない状況で歩いた場合の目安と言えそうだ。
東海大学生はどの道を選ぶ?
学生15人にした聞き取り調査では、授業の合間や登校中に声をかけ、普段利用しているルートや選ぶ理由を尋ねた。その結果、3つの通学ルートの中で最も利用者が多いのはエスカレーターを使うルートだった。急な坂を上る必要はあるものの、エスカレーターが整備されているため負担が少ないとの声があった。
次に多かったのが県道を通るルートで、坂は長いが比較的緩やかで歩きやすいという声が聞かれた。
また、県道ルートの途中から歩行者専用の細い道へ入る裏道ルートは信号待ちを避けられるため、条件次第ではより早く到着できることが分かった。調査中には、駅前で学生に声をかけても急いで授業へ向かうため立ち止まれない人も多く、朝の通学時間帯の慌ただしさを実感した。一方で話を聞くと、「雨の日は県道ルートを使う」「1限の日は裏道を通る」ということや、理系学部の学生は、キャンパス内でも坂の下側にある校舎へ向かうことが多く、エスカレーターを上った先の横断歩道を渡り右に曲がるルートを利用するという。
14号館へ向かう学生は裏道を選ぶ人が目立ち、「急ぐ日は裏道」「坂が嫌だから県道」と目的や体力に合わせて使い分けていた。また、「裏道は信号が少なく早いが、夏は虫が多いので使わない」という声も聞かれた。筆者自身も裏道で木の上にカラスのつがいを見かけ、巣作りの時期には近づくことに少し不安を覚えた。通学路には時間だけでは測れない、それぞれの特徴があった。それぞれが自分なりの通学スタイルを持っていることが分かった。
ただ、利用者数だけでは分からないのが、それぞれのルートの歩きやすさだ。記者が実際に歩いて最も負担を感じたのは、聞き取り調査で「比較的楽」という声があったエスカレータールートだった。エスカレーターがあるとはいえ、その手前には急な坂が続き、授業に遅れそうで足早に歩くと汗ばむほどだった。そして雨の日は利用者の多くが傘を差すため、エスカレーターでは一列で長い列をつくることになる。その日は階段を使ってキャンパスへ向かったが、運動不足もあって息が上がり、想像以上に体力を消耗した。所要時間だけでなく、天候や体力によって通学の負担は大きく変わることを実感した。
エスカレーター設置で何が変わった?
通学路の変化を知るため、長年エスカレータールートの途中で営業を続けるカフェのルヴェランスを訪ねた。学生を毎日見続けてきた店主なら、通学路の変遷や学生の行動の変化を知っていると考えたからだ。ルヴェランスの店主・石井恒子さんによると、2017年にエスカレーターが設置されて以降、この道を利用する学生は増えたという。「坂の上から下までエスカレーターに列ができているのが不思議でしょうがない。若い人なら歩けばいいのにね」と笑いながら話してくれた。
また、一日の中で最も人通りが多いのは朝9時ごろの1限開始前で、特に新入生が通学に慣れていない4月から5月にかけては、例年以上に混雑するという。長年この場所から学生たちを見守ってきたからこその視点だ。
最短が最良とは限らない!
今回の調査を通じて分かったのは、「東海大学前駅から湘南キャンパスへの最短ルート」は一つではないということだ。1号館方面へ向かうならエスカレータールート、14号館や11号館方面なら裏道ルートなど、目的地によって最適な道は変わる。また、歩きやすさや混雑状況を重視する人もいれば、とにかく早く着くことを優先する人もいる。毎日何気なく歩く通学路も、実際に歩き、学生や地域の人に話を聞くことで、一人ひとりが目的地や体力、季節に応じて自分なりのルートを選んでいることが見えてきた。
取材協力・参考文献
石井恒子さん(カフェ「ルヴェランス」店主)
東海大学 学生の皆さん