睡眠時間を十分確保することの大切さ
この記事では、睡眠をとる際に、寝つきや目覚めがよかったり、睡眠後にきちんと疲れが取れたりする眠りを、快適な睡眠として考えていく。快適な睡眠をとる方法を探るためにまず、精神科を専門とし、特に睡眠医学の臨床研究を行ってきた、久留米大学学長・理事長の内村直尚教授にお話を伺った。
そもそも、適切な睡眠時間は何時間ほどなのだろうか。内村教授によると、成人は大体6時間から9時間が適切な睡眠時間と言われているとのことだ。「いろんな病気の予防には睡眠が一番いいということは明らかになっていて、睡眠が不足するとちょっとしたことで怒りやすくなって、感情が不安定になるということも分かっている」とも話していて、睡眠不足は健康に大きな影響を及ぼす。
また、睡眠不足が反射神経や集中力、認知機能の低下を引き起こし、昼間のパフォーマンスの低下や、産業事故や交通事故の原因にもなり得る。健康的かつ昼間のパフォーマンスを維持するためには、まず十分な睡眠時間を確保することが大切であるとわかる。
寝ても疲れがとれないのはなぜ?
適切な睡眠時間をとっていても、疲れがとれない、目覚めが悪いという日もあるだろう。その原因について内村教授は、「それは多分、睡眠の時間は確保していても質が悪いってことになると思うんですよね」と話していた。
内村教授が最初に挙げた例は、寝る前のスマホなどによるブルーライトの影響だった。「夜は明るい光を浴びない」と繰り返していて、24時間社会になり夜が明るいことも、睡眠の質が悪くなっている原因とのこと。コンビニの光はブルーライトが多く、「夜9時以降にコンビニに行って長くいると、もう完全に睡眠の質が悪くなってくる」という。夜の光を遮ることが大事で、寝る時には真っ暗のほうが深く眠れることが研究で明らかになっている。真っ暗にするのが不安な場合は、「ブルーライトじゃなくてオレンジ色の暖色系の光にして、間接照明にして、できれば目線よりも低いところに間接照明を置いておく」ことを勧めていた。
また、「特に朝一定の時間に起きるというのが睡眠の質を高める意味で大事で、そして朝の光を浴びて朝ごはんを取る。この3つが睡眠の質を良くするために最も大事」とのこと。規則正しい生活が睡眠の質において大切であることがわかった。
そして、食事も大切であると話していた。アルコール、カフェイン、夜食などを寝る前に摂ることで、睡眠の質が悪くなるという。内村教授は「食事をとって少なくとも2時間から3時間たって床につくというのが重要なところ」と言う。よく眠れる食べ物がテレビなどで紹介されていることに対して、「そういうのを食べたからって睡眠がよくなるわけじゃないので、食べるものよりも夕食を食べた後、床につくまでの時間が一番大事」と話していた。お腹が減っていることも眠れない原因に繋がるため、「寝る前にお腹が減っていたら消化のいいスープとかおじやとか、そういうのを少しお腹に入れるっていうのが、睡眠にはプラスになります」との助言もいただいた。
睡眠の質を高めるために寝る前にできること
寝る前にした方がいいことについても聞いてみた。睡眠の質を下げる行動を控えることの他に、寝る前はリラックスすることが良いという。リラックスの方法としては、ゆったりとした音楽を聞く、アロマを焚く、ヨガやストレッチなどで軽く体を動かす、体を温めるなどを挙げていた。
音楽を聞きながら寝ることに関して、「寝つくまでは音楽がかかっていた方が、眠りをあまり意識せずに音楽の方に自分の気持ちが向かせるという意味では寝つきやすくなるけど、寝た後は音があると絶対睡眠が悪くなるので、タイマーをかけて寝たら音は消えるようにすることがポイント」という指摘があった。また、激しいロックなどではなく、波の音などの優しい音がおすすめとのこと。
また、日中の運動時間も睡眠の質に大きく影響するため、体を動かすことも効果的だという。「昼間運動するかしないか、激しい運動じゃなくてもいいんですけど、散歩するかしないかとか、こういうのが明らかに夜の睡眠と関係してきますよね」と話していた。体を動かすように意識することも、睡眠の質と量を確保するために大事である。
内村教授は最後に、「睡眠を取ることが一番幸福感を感じるようになるというエビデンスも出ているんですよ」と、教えてくれた。人間がストレスを唯一感じないのは寝ているときであり、寝ている間にストレスを解消するようなホルモンも出てくるとのこと。内村教授にお話を聞き、睡眠の大切さや、質の良い睡眠をとるためにできることについて知ることができた。
寝具店を訪れる地域の人々の悩みの声
次に、寝具の販売などを通して地元住民の睡眠に関わってきた越前屋ふとん店を訪れた。秦野駅から徒歩8分のところにある越前屋ふとん店は、創業は1908年という老舗で、主に、寝具全般の販売、寝具のリースレンタル、寝具のメンテナンスなど、眠りに関わる商品やサービスを提供している。越前屋ふとん店で、現在代表取締役を務めている、4代目の山本貴一さんにお話を伺った。
お客さんに多い悩みとして、山本さんは大きく3つの悩みを紹介してくれた。1つ目の悩みとして「寝ても疲れがとれない、すっきり起きられない」という声が多いと話してくれた。原因としては、もともと睡眠時間が少なかったり、年齢を重ねることで眠りの質が浅くなったりといったことが考えられるという。2つ目は、「朝起きた時に腰が痛い」という悩みだ。これは、敷布団やマットレスが体に合っていなかったり、長く使って寝具がへたってきしまっていたりすることが原因だという。3つ目は、「肩こりや首の痛み」の悩みだそうだ。これは基本的に枕の高さがあっておらず、首や肩に負担がかかっているためにおきるという。
こういった悩みに対して山本さんは、「お客さんによって、やっぱり年齢とか体型、使っているお部屋の環境とかが違うので、それをいろいろ伺って、それに合うような感じのものをなるべくご提案できるように」と話していた。「今は本当にいろんな種類の枕・マットレスが出てきているので、比較的お客さんの一人ひとりに合わせた提案はできると思います」とも言っていて、それぞれの悩みに合わせた寝具を提供していた。
「基本的に良質な寝具というか、ちゃんとした布団を使うと、やっぱり体の安定もあるし、健康な状態を保てるというか、そういうのが一番メリットとしてはあると思うんですよね。良い寝具で寝てもらうと、寝つきが良くなるとか、あとは朝までぐっすり眠れる。夜、目が覚めたりとかが少なくなってたり。あと一番は、朝起きた時にすっきり起きられるというか、疲れが改善されているっていうのが、寝具と関係してくると思います」
睡眠の質を良くする寝具の選び方
そんな寝具はどのように選べばよいのだろうか。寝具の種類については、「寝具って大きく分けて、体を支えるいわゆるマットレスとか敷き寝具って言われているものと、上からかける掛け布団。それからあと枕」と、教えてくれた。
敷き寝具の選び方のポイントについて山本さんは、「硬さとか、体圧分散とかってよく言っているんですけど、特に腰とか背中とかに、あんまり圧力がかからないようにできる状態にする」と話していた。「意外と大事なのは寝返り」とも語り、「筋肉とか関節とかが、起きているときに緊張しちゃっている状態があると思うんですけど、それを寝返りすることによってリラックスさせて、ストレッチみたいな効果を発揮して、朝起きたときに体をリフレッシュさせるっていう感じ」と続けた。山本さんによると、人は一般的に、一晩に20回〜30回くらいも寝返りをするとのことだ。「柔らかすぎちゃう寝具だと体が沈み込んじゃって、寝返りができなくなっちゃったり、寝返りの回数が減っちゃって、朝起きたときに体がちょっと変に疲れちゃっているなってなる可能性も出るんですよ」と話していた。寝返りがしやすいかどうかも、寝具を選ぶうえで重要な決め手となることがわかった。
また、枕は、オーダーメイドで自分に合った枕を作るものにも人気が高まっているという。実際に使う測定器も見せていただいた。お客さんは最初に睡眠に関する悩みをカウンセリングシートに記入する。次に、計測器を使って後頭部から首の型をとり、後頭部や首の位置を測りそれをもとに合った枕に実際に寝てみる。その後調整板を挟んで高さを変えながら、楽な姿勢をとれるように調整を重ねることで、自分に合った枕を作ることができる。
掛け布団は、使われている素材それぞれに特徴がある。綿の布団は厚みがないと保温性がないため、重さがある。山本さんは「綿の布団はやっぱり寝たときに包み込まれるような感じが出る」と、その独特の柔らかい感触や重さが強みであると話す。しかし、綿の布団を干す頻度について聞いたところ、「綿って湿気をどんどん吸ってはくれるんですけども、自分で乾かす力っていうのが実はないので、できれば晴れた日は毎日っていうくらい」と、毎日きちんと手入れをすることが必要だと答えてくれた。
羽毛布団には、軽くて温かいという特徴があり、「羽毛布団に関してはいろんな方に人気がある」とのこと。また、女性に特に人気だという真綿布団については、「体にしっかり馴染んでくれて温かさを逃がさない。女性って冷え性の方とか多いと思うんですけど、真綿布団っていうのは体を芯から温めてくれるような効果も実はある」といい、体が冷えてしまいがちな冬場にもおすすめの素材であることを教えてくれた。
近年の寝具の素材について山本さんは、「値段の関係からポリエステルとか化学繊維が多くなってきちゃってる。天然繊維の方が人間の体には負担が少ないっていう感じでまた見直されてきている。あと環境に優しいっていうのも多分あると思うんで、そういう点でもちょっと値段は正直高いんですけど天然繊維とか使ってもらってもいいと思う」と、人間に適した素材として天然繊維の布団を使うことを推奨していた。
快適な睡眠の大切さ
山本さんに最後に、睡眠の質をよくするために気を付けて欲しいことを伺ったところ、「とにかく睡眠を疎かにしない」と話していた。「徹夜とかしちゃうと、二日酔いをしたのと同じような状態に次の日もなっちゃうので」と、睡眠不足による体調への懸念を話してくれた。十分な睡眠時間を確保するために、「朝起きる時間から逆算して、寝る時間を決めてもらうというか、そういう生活のリズムを作ってもらうと多分いいと思います」との助言もいただいた。眠ることは生活の基本であり、ひとつずつできることを改善していくことで、生活の質が向上する。「やっぱり、眠るっていうことは、なるべく大事に考えてもらいたいと思います。」と、山本さんは語っていた。
お2方への取材を通して、生活のリズムや寝具の使い方を工夫することが、快適な睡眠につながることを知ることができた。日中をよりよく過ごすためにも、十分に睡眠時間をとり、睡眠の質も高いものにすることが大切である。自分にできそうなことをひとつずつでも取り入れることで、今夜の睡眠を快適なものに近づけみてはどうだろうか。
取材協力・参考文献
内村直尚教授(久留米大学学長・理事長)
山本貴一さん(越前屋ふとん店 代表取締役・4代目)