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健康 | 疑問 No.18

「歳をとると早寝早起きになる」のはどうしてなのか

歳をとると早寝早起きになるという印象はないだろうか。そこには3つの体のメカニズムが大きく関係していることが東海大学の寺尾晶教授への取材で分かった。また厚生労働省のデータより、平均睡眠時間が最も少ないある年代とその理由にも迫っていく。

原田 美華(広報メディア学科 3年) |

💬 寄せられた疑問

「歳をとるとなぜ早寝早起きになるのか」

— 投稿者:20代・大学生

調べた大学生

原田 美華(広報メディア学科 3年)

少しでも時間があれば寝たいと思うほど寝ることが大好きな私が睡眠に向き合って書いた記事です。

私の記事では、友人からの疑問である、「歳をとると早寝早起きになるのはどうしてか」という疑問に回答していく。あなたも、早朝にふと散歩をしたときに散歩をしている方がお年寄りの方であると感じたり、自分の祖父母の起床、就寝時間がとても早いと感じたりと思ったことはないだろうか。睡眠の生理的意義や、睡眠・覚醒を調節するメカニズムを解明する研究を行っている東海大学生物学部生物学科の寺尾晶教授にインタビューした。

歳をとると早寝早起きになるのは本当か

寺尾教授によると、歳をとると早寝早起きになる。そこには3つのメカニズムがあることが分かった。まず一つ目に「位相(いそう)の前進」が起きているそうだ。我々人間は一日の中で体温が1℃程度変動する。体温が夕方に下がり、体温が下がる局面で入眠するという体のつくりになっている。逆に、体温が上がるのは明け方で、体温がある程度上がると覚醒状態になり目が覚めるという仕組みになっている。このリズムが歳をとると1〜2時間前倒しになる。これが位相の前進である。

オンラインでお話を伺った寺尾晶教授

2つ目は「体温の振幅の平坦化」だそうである。寺尾教授によると大学生くらいだと昼と夜の体温差が1.0〜1.2℃程度あり、歳をとるとこの差が0.6〜0.8℃程度に縮まる。一日の最高の体温と最低の体温の振れ幅が小さくなる。これと連動して睡眠と覚醒のメリハリも縮まってくるということである。教授は「若いころは起きている時と寝ているときのメリハリがすごくあるのだけど、歳をとってくると、眠りも浅くなるし、起きているときも若いころよりもしっかり起きられていないのでリズムの差も小さくなる」とおっしゃっていた。

3つ目は「ヒトのリズムと光」についてだ。1日は24時間であるが、本来のヒトの概日リズムは24.2時間くらいだといわれているそうだ。このため時間情報のない環境で過ごすと毎日数十分時間が後にずれていく。後退する位相を24時間のリズムに同調させる最も強い因子が光であるという。光を浴びることで24時間のリズムにリセットされる。寺尾教授はこうもおっしゃっていた。「歳をとるとだんだん目が悪くなり、目の水晶体が濁ってきて、光がだんだん脳に伝わりにくくなる。また、生物時計というものが脳にありそれも弱まってくるためリズムを同調させることがだんだんできなくなっていく」。

つまり、概日リズムの位相前進、体温リズムの振幅の平坦化、生物時計の弱まりといった3つのメカニズムにより、歳をとると早寝早起きになることがいえるそうだ。

実態調査

早寝早起きをしているということは睡眠時間の足りてない年代があるのかもしれないと考え、睡眠時間について厚生労働省のデータを調べた。

厚生労働省によると、成人の適正な睡眠時間は6〜8時間と考えられ、1日の睡眠時間が少なくとも6時間以上確保できるように努めることが推奨されている(厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。厚生労働省が2023年に20歳以上の男女5473人に行った1日の平均睡眠時間の調査によると、6〜8時間の睡眠が取れている20代は全体(402人)の54%(217人)であった。同じく60代は全体(1004人)の52.3%(525人)であった。驚いたことに50代は全体(1034人)の41.9%(433人)しか平均的な睡眠時間を取ることが出来ていなかった。(令和5年国民栄養調査)

厚生労働省「令和5年国民栄養調査」の結果(2023) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66279.html より筆者作成

私の両親がちょうど50代ということもあり心配だったため睡眠時間について聞いてみたところ、両親ともに6時間以上寝ていることが分かった。ただ、データから分かった情報としては20代と60代は適正とされる睡眠時間が取れているが、そこまで歳をとっているという印象の無い50代の睡眠時間の短さだった。

50代は最も睡眠時間が短い年代?

厚生労働省のデータから50代の睡眠時間が最も短いことが分かる。では、どうして50代の睡眠時間が最も短いのだろうか。寺尾教授によると「50代は社会的あるいは職業的な責任のピークの時期であり、社会的制約が一番大変な時期であり、それに加えて、体の無理も効かなくなってくる時期である」とのことだった。

教授がおっしゃるように50代は社会的にも上に立つ機会が増え、家庭的にも子供がいれば、大学生くらいのお子さんがいて、家庭でも責任のピークであり、体の無理がギリギリ効かないため睡眠時間がしっかりとることが出来ないと考えられる。また定年の年齢もだんだん上がるにつれ、「まだできる」と考え、体は無理が効かないのに、無理をしてしまうことが多いのが50代である。

どの年代にも言えることとは

年齢に関係なく、「健康的な睡眠のために、『睡眠・食事・運動』のリズムを整えることが、不可欠である」と寺尾教授はおっしゃっていた。自分で、健康な睡眠を判断することが難しいと考えるかもしれないが、自分で判断する簡単な方法がある。それは、朝起きたときに疲れを感じるか、感じないかだ。疲れを感じた場合は健康な睡眠がとれていないということになる。健康な睡眠をとるために、朝の体調を気にかけながら睡眠と向き合ってみるきっかけにしてみてはどうだろうか。

取材協力・参考文献

寺尾晶教授(東海大学生物学部生物学科)

・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2023)
・令和5年国民栄養調査(厚生労働省)